« スーク、ウンパルンパ、JamJam。 | Main | 浦和11節、朝日支局襲撃から19年。 »

05/03/2006

『ブロークン・フラワーズ』、2、3のこと。

多分、ジム・ジャームッシュは映画というメディアを使って語りたいことなど何もない。ジャームッシュが登場人物に語らせる言葉はすべて日常で、ありふれている。ラスト近く、旅の途上の青年につぶやく警句めいた台詞にも深い意味はない。ただ、真実ではあるかもしれない。
映画として表現される以上、受け取る側への配慮はあってしかるべきだろうけど、ジャームッシュ作品においてはただ造形された登場人物たちに対する自身の愛情があるばかり。加えて、映画を作るという行為への愛と。
そんなことをしみじみと感じた。

音楽といいドン(ビル・マーレイ)が着るフレッド・ペリーの2本線のジャージといい、のっけからグルーヴィーだ。隣家のエチオピア系らしい家族のノリといい。ごくあたりまえのことをしかつめらしくしゃべるこのエチオピア系の旦那がめちゃくちゃ楽しい。
ドンは何種類かのジャージを着ていたけど、全部2本線のフレッド・ペリーだった(笑) この2本線は何を意味していたのだろう? 旅の青年が着ていたジャージも2本線だったし、ラスト、途方に暮れて立ちつくすドンの後方にある道路のセンターラインも同色の2本線だったし。ジャームッシュのただのアソビゴコロ?

それにしてもビル・マーレイは何も変わらないね。進歩しない、とも言うけど(笑) これほど演技のスタイルを変えたり凝った役作りをいっさいしない役者も希有。ほんとうにほんのちょっとした表情の変化だけでその映画に夢中にさせる。
だいたい、あんなふうにソファに横たわることのできる俳優なんて他にいないよな。

他に感じたこと、2、3。
・隣人のエチオピア系の奥さんを演じた女優のきれいさに絶句した。ほかに何に出演しているのだろう。
・ジェシカ・ラングはちょっと凄いキャリアの積み重ね方をしてきている。『ビッグ・フィッシュ』での彼女はもう女神としかいいようがない寛容さを感じさせたのに、この作品でのネガティヴさは何だ?
・ドンの元恋人のひとり、バイカーの女優はデレク・ジャーマンのミューズだった女優らしい。そんなことをウチの相方に教えられても、だいたいデレク・ジャーマンの作品なんてほとんどストーリー性はないから覚えているわけがない。
・エチオピアンミュージックのことを調べてみよう。これはよかった。追いかけたい、ムラトゥ・アシュタトゥケ

May 3, 2006 in films |

Comments

ジム・ジャームッシュの作品を眺めていていちばん感じるのは、あんたいいヤツだな、みたいな気持ちなんですよね。もちろん、その”ヤツ”とはジャームッシュのことなんですが。それはやはり作品の中に彼の愛情が詰まっているからなんでしょうね。特別なストーリーがなくても何か伝わるものがあります。

ところで、作中の”2本線”については気づきませんでした。とても面白い描写ですね。2本の線が交わらずに並行にのびるイメージは何かを表しているのかもしれません。

あと、あのエチオピア系の奥さん、ぼくもドキッとしました。とくに目が美しい。とても魅力的な女性だと思いました。

kikuさん、うちのブログにコメントありがとうございます。でもあれですね、浦和なんですね(笑)。

Posted by: Ken-U | 4 May 2006 01:01:19

>Ken-Uさま
そうそう、特別なストーリーがなくても伝わるもの、ありますよね。これはもう、人徳なのかもしれませんね(笑)

そうなんです、浦和なんすよ。住んでいるところは大阪なのですけど、在阪のチームに全然惹かれるものがないもので。浦和、嫌いですか?(笑)

Posted by: kiku | 6 May 2006 20:43:57

こんばんは、コメントありがとうございました。
おっしゃる通り、ラストにドンが発する警句めいたセリフも、
たいした意味はないように思います。
それよりも、ドンをはじめとする人物造形が素晴らしいものでしたね。
こういう、個性ある人物造形だけでゆるゆると話が進んでいくのは、
『かもめ食堂』とも似ているところがあります。
私は変に物語をいじられるよりも、断然このタイプの映画が好きですね。
あまりにも気に入ったので、サントラが欲しくなってきました。

Posted by: 丞相 | 6 May 2006 22:32:22

>浦和、嫌いですか?(笑)

嫌いではありませんよ。ただ、ぼくは味スタに通っているものですから、立場上浦和を認めるわけにはいかないんです(笑)。いいライバルだと思っていたんですが、ちょっと差をつけられているようです。

Posted by: Ken-U | 7 May 2006 01:09:11

>丞相さま
人物造形だけで話がすすめられるのはビル・マーレイだからこそ、なのでしょうか。『ロスト・イン・トランスレーション』を思い出したりしました。
あれもゆるい映画でしたね。

Posted by: kiku | 8 May 2006 09:04:04

>Ken-Uさま
あ、そうだったのですね。ひいきのチームを応援するのにスタジアムに「通う」ことのできる土地に住んでいらっしゃる事からしてうらやましいのですが。
いまはアレですけど(笑)、石川が戻ったら怖くなりそうです。

Posted by: kiku | 8 May 2006 09:08:19

The comments to this entry are closed.