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09/19/2006

『マッチポイント』、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、中南米の乾いた空気。

『マッチポイント』
ニューヨークを撮り続けてきたウディ・アレンがロンドンではいったいどんな風景を切り取るのか、それに一番興味があったのだけど、そういう部分では馴染めなかった。脚本が素晴らしく良くて、物語の展開を堪能するので満たされたた、ともいえる(笑) いやほんと、脚本は良かった。
見終わったあとで、そういえば主人公がドストエフスキーの『罪と罰』とその解釈本を読むシーンが出てきたなーとちょっと笑ってしまったけど、ラスコーリニコフの老婆殺しを最初に観客に意識づけたのはウディ・アレンの遊びだろう。伏線というほどでもなく、とくに深い意味はない。作品中にやたらドストエフスキーとかフェリーニとかベルイマンを引き合いに出したがる人だから。

それにしても笑えるシーンがなさすぎる。自虐的な笑いさえない(アレンは出演していないからそれもそうだけど笑)。ペーソスもない。『インテリア』ほどシリアスではないけど、こんなラブ・サスペンスも撮れるんだ、アレン。
ウディ・アレン作品と知らずに観たら、気付かないだろうな。

『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
脚本はイニャリトゥファミリーのギジェルモ・アリアガ。悪いはずがない。時間軸の操作は今回は『21g』ほど意識させられることはない。ただじっくり腰を据えて話を追えばいい。有無を言わせず引き込ませる。ヒメネスという架空の村の設定がポイントだったと思う。ひとつくらい謎を残すのが、余韻に浸れるというもの。

いや、そんなことはどうでもいい。メキシコ国境〜メキシコの風景が想像を絶して美しい。乾ききった空気に根源的な飢えを感じる。水とか、信じ続けていたい何かとか。青の使い方も絶妙。こういう色彩と風景をバックに映画を撮るなら死んだ友人を葬るためのロードムービー(というにはハードにすぎる行程だけど)以外、他にどんな映画のジャンルがあるんだ? っていうくらい。トミー・リー・ジョーンズにこんなロケハンの才覚があるとは思ってもみなかったよ。なんかあれだな、ヘンリー・フォンダあたりがモンタナを見いだしたのと同じようなエポックメイキング的なものを感じました。

っつうか、中南米って、映画界では近年のブームなんですかね。『モーターサイクル・ダイアリーズ』といい、イニャリトゥ作品といい。
『マッチポイント』に『モーターサイクル・ダイアリーズ』が出てくるとは思いもしなかったし。

September 19, 2006 in films |

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Tracked on 21 Sep 2006 22:54:59

Comments

確かに『マッチポイント』に『モーターサイクル・ダイアリーズ』は意外でした。ウッディ・アレンからロバート・レッドフォード(製作)への遙かな挨拶なんでしょうか。イニャリトゥの「バベル」公開が待ち遠しいです。

Posted by: | 19 Sep 2006 12:35:02

>雄さま
調べてみたところ(笑)、『マッチポイント』『モーターサイクル・ダイアリーズ』のどちらの製作にも「テネンバウム」という名字の人がいます。身内なのかもしれませんね。

Posted by: kiku | 19 Sep 2006 21:55:56

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