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06/01/2007

『ダナエ』藤原伊織

藤原得意の中編集。ダナエと聞いてクリムトの傑作を思い出すが、表題作のダナエとは、1985年にエルミタージュで硫酸をかけられたレンブラントの作品(→参照)のこと。

藤原の、骨太だけどどこかパセティックな文体と、プラトニックな恋愛感情からくるセンチメントのかけらはここでも変わらない。他のエンタテイメント系の作家の小説ってほとんど知らないのだけど、藤原の作品さえ読んでいれば、ほかにお気に入りを探す理由はないだろうとさえ思う。

『ダナエ』はちょっと饒舌すぎるきらいもあると感じたけど、台詞が洗練されているし、とにかくキャラクター造形がうまい。高村薫作品の「合田刑事」のように、ぐいと胸をわしづかみにされるような感覚がある。藤原ファンが『テロリストのパラソル』の島村の影をどの作品にも追い求めるのがわかるような気がする。

でももう、新作を望むべくもなくなってしまった。これから、何度過去の作品を読み返すことになるのだろう。

合掌。

ダナエ
文藝春秋
発売日:2007-01

 

June 1, 2007 in books |

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著者:ダナエ ダナエ価格:¥ 1,300(税込)発売日:2007-01 個展の最 [Read More]

Tracked on 4 Jun 2007 16:01:48

» ○「ダナエ」 藤原伊織 文藝春秋 1300円 2007/1 from 「本のことども」by聖月
 前作『シリウスの道』の書評を書いた際、評者はこう結んでいる・・・あのイオリンが、病魔と闘っているのなら、復活を大いに期待している。応援している。手記ではなく小説が読みたい・・・  癌と闘っているイオリン。悪い方向に考えたくはなくても、もう小説では出会えないかと思っていた。正直言って本書『ダナエ』は過去に書いた短編を三作載せた作品集なのだが、それでも小説で出会えて嬉しかった評者である。評者の場合、大好きな藤原イオリンの作品が雑誌に掲載されていることを知ったとしても、基本的に雑誌小説は読まないこ... [Read More]

Tracked on 5 Jun 2007 08:16:58

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タイトル:ダナエ 著者  :藤原伊織 出版社 :文藝春秋 読書期間:2007/04/04 - 2007/04/05 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 個展に出品された肖像画に何者かがナイフを突き立て、硫酸をかけた。その事実を知った画家が取った行動とは?広告界と美術界を舞台に、男たちと女たちの痛切な悲哀を描いた全3編を収録した、心揺さぶられる作品集。 表題作「ダナエ」のほか、二編を収録した短編集。「ダナエ」は100ページほどだから、中編といった... [Read More]

Tracked on 5 Jun 2007 18:58:50

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ダナエ # 出版社: 文藝春秋 (2007/01) # ISBN-10: 4163255907 評価:82点 中篇が3篇。 最初の「ダナエ」は起承転結をきちんとまとめて小説の様相を保っているが、その次の「まぼろしの虹」は、長編小説の一部を切り取ったような感じもあってまとまりのある終わり....... [Read More]

Tracked on 13 Oct 2008 21:34:11

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