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08/25/2007

『インランド・エンパイア』

Rynch 冒頭からデヴィッド・リンチ・ワールド全開。レコード盤に乗った針の映像、被さる重層的なインダストリアル・ノイズ。いきなり「イレイザーヘッド」の世界に引きずり込まれる感覚に、何かを期待しないリンチファンなどいるまい。

この映画の解読は無駄だろう。そもそも脚本はなかったのだし(リンチの頭の中にだけあった)、撮っている間中、自分でもいったい何を(どの部分を)撮っているのか分からなかったらしい。この多重層怪奇の映画を監督以外の誰が編集できるのだろうと思うと、笑えてくる。

一見バラバラなシークエンスも、収まるべきところへ収まるピースの一片。すべてのカットに意味がある。あらゆるシチュエーションが唐突にどこかにつながる。それらをすべて頭に叩きこんでこの映画を追っかけるのはちょっと無理。3、4回観ないとすべてを理解できないのではないかと思えるけど、そこはリンチ作品、きっと何度観てもどす黒い新たな疑問が起ち上がってくるのだろう。

リンチが伝えたいメッセージなどなく、それでもすべては収束すべきところへ収束する。難解な映画ではあるけど、デヴィッド・リンチという極上のエンタテイメントであることに変わりはない。エンディングのカタルシスはちょっと他に比べるものが無い。

いや、フェリーニの「8 1/2」があるか。

 

August 25, 2007 in films |

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