03/06/2008

月にまつわる映画2編、モリッシーの「ムーン・リヴァー」

アカデミー賞授賞式が行われる前後週は、各TV局が特集で過去の受賞作品を放映してくれて楽しめる。というわけで最近録画した、「月」が印象的な映画を2本続けて観た。いずれも過去に観ているものだけど。ブレイク・エドワーズの「ティファニーで朝食を」とノーマン・ジュイソンの「月の輝く夜に」。
そういえば先月末の満月は凄かった。みんなそう感じていたようで、Flickrでも世界中から満月の写真がアップされていた。

「月の輝く夜に」はタイトル通り満月の輝く夜に、主人公たちがそろいも揃って発情し、大変身を遂げるロマンチックコメディ。といっていいんでしょうかね。ホラーじゃないんだけど(笑)
メトロポリタンでプッチーニの「ラ・ボエーム」を鑑賞した後、主人公シェールがニコラス・ケイジのアパートの前で誘われてためらうシーンは美しい。底冷えのするブルックリンの夜風になびいて揺れるシェールの黒髪。もうこれは映画史に残る名シーンじゃないかと。メイクアップ賞を獲っていないのが不思議なくらい。つっか、アカデミーメイクアップ賞ってありましたよね?
出演者皆が素晴らしい演技でいちいち堪能してしまうんだけど、どれこもれも脚本の為せる技。
あと、ブルックリンの下町がほんと魅力的に映し出されていて、それだけでも観る価値あるんじゃないかと。

「ティファニーで朝食を」では月の出てくるシーンはない。オードリー・ヘプバーンがアパートの窓の桟に腰掛けて、ギターを弾きながら「ムーン・リヴァー」を歌うだけだ。ヘンリー・マンシーニはこの曲で前年の「酒とバラの日々」に続きアカデミー主題歌賞を獲得。ちょっと我が強くてかなり背伸びしている感のある主人公にオードリーのはかなげな歌声はキャラクター造形のうえでとても重要な役割を果たしている。
それでも映画自体はほんとに他愛もないこれまたロマンチックコメディ。脚本にはさっぱりキレがないし相手役のジョージ・ペパードがひどい大根っぷりなので、マンシーニのこの曲がなければオードリー・ヘプバーンでも持ちこたえられなかったかもしれない。それだけ素晴らしい曲。

「ムーン・リヴァー」といえばフランク・シナトラやアンディ・ウイリアムスの歌唱が有名だけど、ちょっと珍しいところでモリッシーが歌ったものを紹介。モリッシーといえば The Smiths ですが、スミスについて書くことは、どれだけ言葉を尽くしても全然足りないと思えてしまって、難しい。だからいつも躊躇してしまう。いつかきっとと、ずーっと思い続けているのだけど。
どうしてモリッシーがこの曲を、シングル "Now My Heart Is Full" の中に収めたのかは知りません。ナンシー・シナトラのファンでもあるようで、そのつながりから、取り上げたのでしょうか。
オードリーの唄うはかなくセンチメンタルな歌とは違って、モリッシーのそれには神々しさが同居しています。間奏は、阿鼻叫喚地獄絵図かよこれ、というような。初めて聴いたときは鳥肌立ちました。

Moon River / Morrissey Morrissey

YouTube でもモリッシーのはあがっていますが、シングルに収められたものに比べれば曲の雰囲気は格段に落ちます。でも、ちょっと面白いです。
Youtube

あと、いろんな演奏の寄せ集め編集版。これはちょっと感動的でした。

March 6, 2008 in music | | Comments (0) | TrackBack

12/31/2007

"Freedom Time" @noon, osaka.

中崎町のNOONのイベント "FREEDOM TIME" へ。
クラブジャズはK.J.M(KYOTO JAZZ MASSIVE)とかSLEEP WALKERとか聴いてこそいるけど、クラブで聴くのは初めて。もう朝までクラブで踊る体力はなさげなのですが、気合い入れて行きましたよ。

SOIL & "PIMP" SESSIONS、爆音ジャズバンド。クラブ・シーンでは知る人ぞ知る存在、らしいのですが、知りませんでした(笑)
それだけに、衝撃的でした。
先にイギリスでブレイクした感、の経歴で、昨年はモントルー・ジャズ・フェス、今年はグラストンベリー・フェスに出演。もう、偽りなし。度肝を抜かれました。。。トランペットのタブゾンビ、こいつ阿部薫かと思ったのは思いすぎでしょうけど。
音がかなり悪いですが、一本 YOU TUBE にアップしておきますのでよかったらどうぞ。

続いて松浦俊夫(United Future Organization)。こちらも(特に女性には)知る人ぞ知る存在らしいのですけど、僕には須永さんの SOUL SOURCE 参加メンバーとしてのほうがしっくりくるアーティストでした。
一言でいえば、エスニックテイストをのせたソウル・ジャズ、とでもいうのか。音と音の間に独特のブルージーな雰囲気がありました。僕的には、わざわざ聴きにいくほどでもないけど、普段からこんな音が流れていたらいいいな、というような。

 

 

それにしても松浦、喋りたがりの人なんですね。合間のMC多すぎ。

 

沖野好洋(KYOTO JAZZ MASSIVE)。いつリアルKJMできるかなーとタイミングを測っていたのですが、やっと。といっても沖野兄だけですけど。Noon_okino_01
キャッチーですね、やっぱり。キレがいい。阿川泰子の「スキン・ドゥ・レレ」でのフロアの爆発ぶりが凄かった。 もう、踊るしかなかったけど、ついていけなかったよさすがに(笑)

というわけで収穫は、SOIL & "PIMP" SESSIONS、追いかけざるを得なくなりました、ということで。

 

December 31, 2007 in music | | Comments (2) | TrackBack

10/15/2007

初めての『フィガロ』

先日録画しておいた『フィガロの結婚』を観る。昨年のザルツブルク音楽祭、モーツァルトイヤー絡みの企画でアーノンクール指揮、ウィーン・フィル演奏。すでにDVDが出ている(→参照)。クラウス・グートの演出が凄い。
クラシックはもとよりオペラに関してはド素人なのでよく知らないのだけど、オペラでこんなカメラワークって、あり? 現場でリアル観賞している観客には見えない視点が加えられていて、それによる臨場感がすげーヒッチコック的。不安感を煽る煽る。普通、舞台芸術観賞においては見慣れない角度だけに。照明も徹底して計算されているようで、美しい。

幕が上がるといきなり息を呑むことになる。舞台セット、舞台衣裳は一切の装飾らしい装飾が削ぎ落とされたスタイリッシュなモノトーン仕立て。動かぬ登場人物の周りを飛び回るケルビム(天使)、これはパントマイムの舞台か! と思わせるような。このケルビム、というのは原作にはない、クラウス・グートの解釈で登場させた狂言回しらしく、一切歌わない、語らない。
どうです、いったいこの舞台↓にモーツァルトが響いているなんて思えますか?(笑)Figaro

グートはベルイマン映画(他、イプセン、ストリンドベリ等)にイメージを得たというが、そう、まさに。北欧っぽい透明感のある暗さと、誰も気付いていない奥深いところにある悲劇の感覚と。照明が、それを見事に引き出している(って、舞台はセビージャだから、おもいきりラテンのはずなんだけどね)。
あれだなー、ハンガリーの俳優、クラウス・マリア・ブラウンダウアーの映画『メフィスト』とかの雰囲気にも似ている。スタイリッシュなんだけど、底にどろどろっとした情念がほの見えているような雰囲気を伝える舞台。
あるいは換骨奪胎されたカサヴェテスの映画。

第1幕、下僕ケルビーノ(クリスティーネ・シェーファー:男役)のアリア「自分が分からない」にいたる直前のマイムのようなさらっとした振り付けはもう、一瞬のピナ・バウシュか? とも思えるコンテンポラリー・ダンス的なそれ。これは第2幕、同じくケルビーノのアリエッタ、「恋とはどんなものかしら」でも再現される。かすかな困惑・驚きといった表情以外、最後までまったく無表情に歌うシェーファーの歌はド素人の耳にも凄い、と鳥肌立つ。その無表情に、抑えつけたエロい情念がちらちらしている。そしてこの直後のスザンナ(アンナ・ネトレプコ)と伯爵夫人(ドロテーア・レシュマン)がケルビーノを女装させるのだけど、どこか密やかな雰囲気のこの場のエロさといったら、ちょっとない。レシュマンの恍惚の表情といったら、もう、アレなんである。

いやー、モーツァルトのエロって、もっと喜劇的かと思っていたのですが、意外、なんか胸をかきむしられるような、焦がれるようなエロスでした。息を詰めてしまう、ような。それでもどこか透徹した印象を残して。
こんなことならもっと早く観ておくのだった、と後悔。

 

過去のオペラ関連記事 »
 ・ベルリオーズ『ファウストの劫罰
 ・ドリーブ『ラクメ
 ・ヘンデル『アリオダンテ
 

 

October 15, 2007 in music | | Comments (0) | TrackBack

10/13/2007

神尾真由子の音。

録画しておいた『強く、強く~バイオリニスト・神尾真由子 21歳~』を観る。この夏、チャイコフスキー国際音楽コンクールで、日本人としては17年ぶりにヴァイオリン部門で優勝した神尾の凱旋公演を追ったドキュメンタリー。ちなみに17年前に優勝したのは諏訪内晶子。

べたべたの大阪人(豊中)のはずだけど、そんな印象はあまり感じさせなかった。ストラディヴァリウスの音も結局は「自分の音でしかない」とさらっと言うあたり、物怖じしない、言いたいこと、感じていることをズケズケ言える、ああ、関西人やなあ、と思えるが、それは自信の裏付けだろう。でもまあ、度胸に関してはイマドキの21歳だ。イマドキなんだけど、音楽の才能は置いといて、他の同世代との決定的な違いは、根性の質、か。
ソリストとしてのデビューが10歳の時なんだけど、だいたい、N響で、シャルル・デュトワなんである。10歳でデュトワに指揮ってもらうなんて、おらが町のサッカークラブのコーチにクライフが就任するようなものだ。
いや、違うのか。Kamio_2

とにかく音が太い。指揮者の大友直人が言っていたけど、自然で、おおらかな音。演奏中はこの表情だ、ヘヴィメタのギタリストの甘さは皆無。音が表情に直結している。
弦楽器演奏者は演奏中一様に苦悶の表情を伴うけど、曲への追求と理解の姿勢は次元が違う。

現代音楽が好きそうだけど、10年後には、バッハの無伴奏を聴いてみたい、と思った。

 

October 13, 2007 in music | | Comments (0) | TrackBack

09/23/2007

大沢伸一、インストアDJ GIGツアー@心斎橋。

アップル心斎橋での大沢伸一のDJに行ってきました。ここで演るのを観るのは3度目。明日は京都でKMF(Kyoto Music Festival 2007)があるのでそれにスケジュールを合わせてきたのでしょうか。

この26日に大沢くんの名義では初のアルバム "The One" がリリース。なんとこのアルバムの全曲が myspace にアップされています(9月25日まで)。シングル "Our Song"はすでにiTMSに。めちゃくちゃキャッチーな曲。よかったらぜひ。Osawa_2

YouTubeには2本アップしました。
ラストのニルヴァーナ "Smells like teen spirit" 〜ブラー "Song2" 〜 "Our Song" も撮りたかったのだけど、メモリが無くなりました(笑)

もう一本はこちら→SO @AppleStore#3

今年5月に心斎橋でやったときの記事はこちらで→大沢伸一@アップルストア心斎橋。

 

September 23, 2007 in music | | Comments (2) | TrackBack

06/16/2007

アメリカンアイドル決勝前夜、イギリスのConneyちゃん。

ここ数カ月、週末の夜はウチの相方につき合って、FOXチャンネルの『アメリカン・アイドル』を観ているのだけど、明日、優勝者が決まる。とはいっても日本は3週間遅れの放送らしいから、本国ではもう既に終わっているのだけど。ちょっとググれば分かるはず。
僕はラキーシャを応援していたのだけど、ベスト4で敗退。決勝に残ったのはブレイクとジョーダンでした。ステージ的にはビートボックスのうまいブレイクが映えているのだけど、ジョーダンの感情の込め方がうまいですね。こりゃブレイク、負けたかな。

で、ここで審査員をやっているサイモンが地元イギリスでも審査員をやっているタレント発掘番組、"Britain's got Talent" で話題沸騰の少女、Conneyちゃんのこと。各所で取り上げられていますね。
...しかし、すげ。
これはジュディー・ガーランドを超えたんじゃないか、と。『オズの魔法使い』に感動したことのある方は、ハンカチのご用意を。

 

June 16, 2007 in music | | Comments (0) | TrackBack

06/12/2007

YBO2の音。

YoutubeでBOREDAMS(ボアダムス)を楽しんでいて、あー、そうだ、YBO2(イボイボ)のライブ映像あるかなと思って探したのだけど、全滅。ググってみたらどれもこれも "no longer avaiable" となっている。トランスレーベルが削除を申し入れたのか、北村の遺族か。どっちにしても、寂しい。

Kitamuramasashi

YBO2のフロントマン(B、Vo、G)、元フールズメイト誌初代編集長だった北村昌士が亡くなってこの17日で1年になる。2000年にYBO2を再開して間もなく情報が途絶え、オフィシャルの更新もなくなっていたから、あれからまだ1年にしかならないのか、という感慨だ。

YBO2の音楽と略歴についてはこちらのブログあたりが短いけどまとまっていると思います。→ o m n i v e r s e
ちなみにYAHOO Music のアーティスト情報では、

キング・クリムゾンとジス・ヒートの間隙を埋めるようなノイジーかつプログレッシヴな音楽性を繰り広げていた。入り組んだ変拍子リフが連続的に展開する複雑な曲構成と、オブセッションに満ちたヒステリックなヴォーカルなどで、ある種の危機感や崩壊感を表出するサウンド(後略)

そう、そういう音楽。メロウなアインシュテルツェンデ・ノイバウテン、の感もあった。

80年代半ば〜後半の日本の音楽シーンにおいて気を惹かれるものといったらボアダムスやZOA、アサイラムなどのトランスレーベル勢か、ナゴムの一部、ミーハーなところでサディ・サッズや G-シュミットといったところだったのだけど、YBO2のカリスマ性は群を抜いていた。というか、そこにいながらにして既に向こう側、の存在感だった。「好きなバンド」というのもためらわれる。
東京の、木場のライブハウスだったか、満員というほどでもなかった観客の大半が、その存在感に対抗するように腕を組んでステージを睨み付けている情景が印象的だった記憶がある。いわゆるトランスギャルはまだ見かけなかった頃。
北村は日々の食事がキヨーレオピンだけじゃないかと思える真っ白な痩躯を折り曲げるようにしてベースを弾いていた。無論その表情はずっと長髪に隠れたままで、窺えることはなかった。残念といえば残念。写真の通り、「早すぎた岡田准一」だったのだから。

レコードは一枚、『太陽の皇子』('86)というのを持っていたはずだけど、無くしてしまったようで、全て廃盤になっている現在、彼等の曲を聴きたいと思えばヤフオクか中古のみ。
と思っていたら、何かのはずみでウチの相方が傑作『ALIENATION』のカセットテープをもっていることが発覚。
おまえなんでこんなん持ってんねん! と聞くも、ぶつぶつとよくわからない反応。わかっていることだけど彼女の音楽経歴はいつも不可解だ。

冒頭の "AMERIKA" のうねりがすさまじい。あー、これだよ、YBO2の音だよ...としばし浸るも、このアルバムではドラムの吉田達也が不発。というか、このころまだ吉田はイッちゃってなかったのですね...
逆に吉田のドラムがあってこその北村のイキっぷりだったわけで、その意味ではちょっと肩すかし。
編集盤でもいいから、再発してくれないかな。
Alienation

 

June 12, 2007 in music | | Comments (0) | TrackBack

06/08/2007

ベルリオーズ『ファウストの劫罰』

オペラCD紹介第3弾はベルリオーズの『ファウストの劫罰』、ケント・ナガノ指揮、リヨン歌劇場管弦楽団。

『ファウストの劫罰』といえば小澤というのが定番らしいけど、小澤の99年のサイトウ・キネンの公演ではメフィストーはホセ・ファン・ダム(Jose Van Dam)、マルガレーテはスーザン・グラハム(Susan Graham)。今回聴いたケント・ナガノ指揮、リヨン国立歌劇団のもの(1994年録音)も、この二人である。
案外、この演奏を聴いて、小澤はこの二人に決めたのかもしれない。

メゾ・ソプラノのグラハムは、ベルリオーズ歌い、といっていのだろう、フランスものが得意。ショソンとかドビュッシーとかよく歌っている。モーリス・ラヴェルとか。
Amazonでは「千変万化するその声は、明瞭さ、美しさともに完ぺきで、磨き上げられたブロンズのような柔らかい輝きを放っているが、絶頂でヴィブラートを抑えることにより、いっそう明るさと鮮烈さを増す。」と評されていて、確かにすこーんと抜けているのだけど、生真面目な印象で、ダークな魅力には欠ける。ショソンを得意にするならば頽廃をモノにしているのだろうなと思わせるのだが、欲望とか、どろっとした部分の表現が稀薄な気がする。
でもまあ、マルガレーテにそんなものを期待しても詮無い。グラハムのマルガレーテは、可憐で、繊細。王道か。

むしろ原作同様、メフィストフェレスと合唱を楽しむ舞台のようにも思う。でも、CDで物語がどう進行しているのか分かるはずもなく、ベルリオーズ版自体、物語としてはそうとう破綻しているらしい。
それでも、浸れます。

Kentnagano

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の紹介エントリ
■ドリーブ『ラクメ
■ヘンデル『アリオダンテ

 

June 8, 2007 in music | | Comments (0) | TrackBack

05/17/2007

ドリーブ『ラクメ』

『アリオダンテ』に続いて、ウチの相方の友人に借りたオペラCDのエントリ第2弾。
歌劇 "Lakme"(『ラクメ』)は知っていても作曲家 Delibes(ドリーブ)のことは知らなかったんですけど。というわけで、→Wiki。組曲『コッペリア』って、ドリーブの曲だったんですね。
ラクメを演じたのはナタリー・デッセィ、指揮はミシェル・ブラッソン。

先月大阪でも、スロヴェニア国立マリボール歌劇場が今をときめくコロラロゥーラ、デジレ・ランカトーレを擁して『ラクメ』を演るとのことで心惹かれましたが、天井桟敷席があるはずもないので、もちろん聴いていない。

19世紀イギリス統治下のインド、バラモン教司祭の娘であり巫女であるラクメの悲恋の物語。『ロミオとジュリエット』+『蝶々夫人』といった感じか。
が、マリボール歌劇場公演でのあらすじ紹介を読む限り、悲恋の相手ジェラルド(軍人)の優柔不断さたるや、自分の軍人という身分と欲望の狭間でおろおろするばかりで、ピンカートンの足元にも及ばない。そこまでアリかよ〜w というような。

で、聴いた印象ですが、第2幕からの惑溺の感覚がたまらない。なんというか、なし崩し的に腰が砕けていく、というか(笑)
白眉は言わずもがな、第2幕の 'Ou Va La Jeune Indoue' (Bell Song)のコロラトゥーラ。手のひらにすくいとった希望や夢とかそういうものがはらはらと零れていくような、かそけき感覚。下手したらかなりエロい。

 

May 17, 2007 in music | | Comments (0) | TrackBack

05/11/2007

ヘンデル『アリオダンテ』

ウチの相方のオペラ好きの友人から「ドイツもの以外」という条件の下にCDを数枚借りて、最初にヘンデルの 歌劇 "Ariodante" (アリオダンテ)を聴く。マルク・ミンコフスキの指揮。
つっか、ヘンデルはドイツじゃなかったっけ? イギリスに帰化したらしいけど。というわけだかどうだか、サッカーのUEFAチャンピオンズリーグの入場曲はヘンデルの楽曲をアレンジしたものらしい(→Wiki)。

物語のことは知らないので、いろいろググってみる。主役のアリオダンテは初演(1734年)ではカストラートが起用されている。現在はズボン役(=宝塚の男役。『ばらの騎士』のアグネス・バルツァあたりがわかりやすいか)が演じているようで、ジャケットのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターがりりしい雰囲気。
で、同じ原作本からヘンデルは他に歌劇『オルランド』も作っているのですね。この初演でもヘンデルは主役オルランドにカストラートを起用しているとのこと。当時はカストラート全盛だったのでしょうか。

『アリオダンテ』は恋のさや当てというか、案の定、という内容なんだけど、そんなことはどうでもいい。最初にそのフォン・オッターの声が聞こえてきたとき、えっ !? とびっくりした。
澄明。

まあ、だまって聴けよ。溺れるぜ。

といいたくもなる、そんな楽曲と歌でした。

Handel: Ariodante / Minkowski, Les Musiciens du LouvreAriodante

 

May 11, 2007 in music | | Comments (0) | TrackBack