オーケストラの向こう側ーーフィラデルフィア管弦楽団の秘密
自分の個性を出したい、けど、(オーケストラという)構成の一部であることに徹さなければならない、その相克にオーケストラ音楽の個性と醍醐味がある、というようなことをコンサート・マスターらしい David Kim 氏が言っていたけど、集団芸術って、みんなそうなのでしょうね。バレエしかり、ダンスしかり。そういう意味では僕みたいなド素人は当然ソロに目がいくばかりであれなんだけど、なんとか違いがわかるようになりたいもの。
フィラデルフィア管弦楽団の団員たちに自由に語らせたドキュメンタリーエッセイで、エピソードのひとつひとつは興味深いし楽しめる。それだけに構成的には取りつく島のない映画で、大団円に向かっていく高揚感などいっさい期待できない。撮影にしても、たとえば NHK のクラシック番組観て勉強しろよとグチのひとつもこぼしたくなる下手っぷり。ブラームスの1番、ベートーベンの3番の演奏風景など、もう救いようがない。最初からビデオプロジェクター上映のつもりならこの程度に堕してしまうのでしょうかね。
今年春先だったか、カラヤン生誕100年記念の番組で観た、カラヤン自身が後世のために残した演奏風景と比べたらもう、雲泥の差、どころじゃないです。ひどい。
でもまあさすがに、サバリッシュが妻を亡くして復帰直後にフィラデルフィアを振ったとき、とある団員は何の先入観もないピュアなメンタルで臨んで演奏し、ものすごいカタルシスを覚えたのに対し、サバリッシュ同様近親の死にあったばかりの団員は演奏することで逆に増幅されて悲しみのどん底に突き落とされてしまった、というエピソードには音楽の持つ不思議な力に、畏敬の念を云々。
って大げさなことでもないのだけど、聴く人によっても様々でいいんだよね、ということを確認できました。
あと、若いホルン吹きが体力と肺活量をつけるためにマラソンを続けている、というエピソード。なんと 2時間42分で完走。いやはやそこまでやるのかオーケストラ団員。トレーニングしている最中いつも15マイル付近で訪れるランニングハイの状況をとても幸福そうに説明していたけど、このときにバックに流れていたのがバッハの無伴奏チェロ第1番。これがハマった。エンドルフィン湧出の至福感にピタリときました。
案外、ジョギング向きなのかもしれません、バッハ。いつか試してみたい。
July 27, 2008 in films | Permalink
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