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10/11/2009

リミッツ・オブ・コントロール

冒頭いきなりランボーの「酔いどれ船」のなじみの一節が飛び出してきて、ああ解釈はすべて観客の胸にゆだねられるのだなと受け止め、まったり楽しんだ。映画の中でも呟かれる通り、想像力が鍵。ジム・ジャームッシュの作品は「デッドマン」以外全部観てきているけど、この作品が僕にはベストかもしれない(ニール・ヤング好きなのにね)。
にしてももう62歳になられるのですか....

ジャームッシュの描く関係性とはパーマネント・バケーションの頃からすでに個と個の間にしかない。たとえばアルトマン(大好きだけど)の映画とは対極にある作品を作り続けているわけだけど、それは結局ロードムービーという範疇で括られてしまうリスクはあっても、そういうスタイルの表現しかできないことについてたぶんジャームッシュ自身認めているのだろう、ずっと主観の外に自分を置いて語り続けている気がする。単なる嗜好なのかもしれないし、ただ無骨なだけかもしれない。それはわからないのだけど。

ジャームッシュがこの映画を作ろうとした経緯にはその契機としていろんな作品が出てきているようだけど、僕にはヴェンダースの「パリ、テキサス」を彷彿とさせて仕方なかった。その印象を加速させたのはクリストファー・ドイルのカメラ。スペインがこんな風に切り取られるとは思ってもみなかった。個と個の関係性をしか描けないジャームッシュにはうってつけだったなー。あの乾燥っぷり。
そういえば「人生には価値はない」って繰り返されたフレーズ、スペイン語では何というのでしたっけ? 車にペンキで描かれていた文句。
その中の "NADA" という単語にはヘミングウェイの一連の短編を思い出させて仕方なかった。Limitsof

引用と反復。ヒッチコックの「断崖」を模したティルダ・スウィントンのいたずら。あの衣装は何を真似ていたのでしょう....
あるいはパス・デ・ラ・ウエルタの眼鏡とタブロー的なエロティシズム。美術館でのシークエンスのラスト、シーツの絵。
列車とか飛行機とか車とか、乗り物の窓から切り取られる風景にジャームッシュはこだわりがあるのでしょうね....
そういう美術館的なシチュエーションでの。ミステリー・トレインでのホテルもそうだし、ナイト・オン・ザ・プラネットのタクシーとか。

というわけでジャームッシュの茶目っ気というか遊び心が楽しめました。「自分こそ偉大だと思う男」ビル・マーレイの住む城塞へしかも煌々とサーチライトがひしめく中を主人公イザック・ド・バンコレがドルガバの鯖色スーツのまま乗り込むあたり。そりゃお前バレるだろ(笑) しかもどう乗り込んだかは、マーレイにも観客にも「想像力に」任せられたわけだし。
そういう、すっと身を引いた表現には心惹かれるものなのです。

October 11, 2009 in films | | Comments (3) | TrackBack (0)