「TOKYO!」
レオス・カラックス9年ぶり。次は何年後になることか。
どうしてまたミシェル・ゴンドリー、カラックス、ボン・ジュノの3人?ってコラボ。ボン・ジュノの過去の作品は未見なので決めつけられないけど、プロデューサーのいったいどういう好みよ?って思いますよね。少なくともゴンドリーとカラックスってどこにも相容れるものが無い。「恋愛睡眠のすすめ」と「ポーラX」のどこに?それを、ボン・ジュノがどう媒介している?
案の定、「東京」 ってコンセプトがあっただけのオムニバスでした。それぞれに楽しめたのですけど、まあむしろカラックスひとりに "メルド" 短編3本をやってもらう方がよっぽど... というオムニバス。オムニバスって形態を悪用しているだけとしか思えない。少し形態は違うけど、近年のオムニバス映画の最高峰、イニャリトゥの「アモーレス・ペロス」に比べればオコチャマのままごと的完成度でした。
で、まずゴンドリーの「インテリア・デザイン」。これはこれでゴンドリーらしく、この世代の空気を掬い取る手腕はさすが、と思わせて軽妙、ナイーヴ。主人公藤谷文子のゆらぎの描写がリアルでした。いい女優さんですね。加瀬亮っていうのはよくわからないのですけど、それはまたゴンドリーの狙いの範囲内だったのでしょう。個人的には大森南朋に期待していたのですが、チョイ役で残念。
カラックスの「メルド」。9年も沈黙していたわりには「ポーラX」と何も変わりないですね。「ポンヌフ」から「ポーラX」までたどり着くのに8年かかっていますから次はそれ以上なんでしょうか。
カメラマンのジャン=イブ・エスコフィエに去られて以来映像美としてカラックス作品を楽しめることはなくなったけど、「ポーラX」からの土臭い、なんとなくロシアっぽい質感は健在。「ノートルダムのせむし男」を思わせるドニ・ラヴァンの役作りには感服させられるし、カラックスの自分自身の自嘲めいた告白を見当違いの物語に被せた神経症的な作りにも笑えるところはある。なんでまたカラックスほどの作家がこんな...という結果にはなったけど、「映画を撮るという行為は、きわめて個人的なものだと思っているんだ」とさらっと言うだけあって天上天下唯我独尊的な、たとえばジョナス・メカス的なそれとはかけ離れた極北をいつかまたきっと見せてそれはそれで楽しませてくれるのだろう、と期待しておく。
カラックスファンのスタンスはちょっと独特なんである(笑)
3本目、ボン・ジュノの「シェイキング東京」。普通だったらこの短編が一番面白かったかもしれない。香川照之は武田鉄矢が憑依したとしか思えない力の入りっぷり。竹中直人は、ボン・ジュノによっぽど気に入られているんだろうな、もう、好き勝手し放題の暴走っぷり。ディテールの作り込み方が引きこもり青年という設定らしく、整然と積み重ねられたデリバリー・ピザのケースがひとつだけ逆さまになっていることを蒼井優に指摘されるシーンとか、数年ぶりに外に出てツタの絡まる自転車を引っ張りだそうと苦闘するシーンとか、ほんとアジアの映画青年の短編だなあと笑わせられた。
だけど、それだけなんですよね。蒼井優という女優の演技を初めて観たのだけど、これだけ監督の意図に適った、一瞬の目の動きとかで空気を作れる演技をしているのに、もったいないなー、と。この枠内ではこうするしかなかったということなのだろうし仕方ないとはいえ。引きこもり青年の恋の行方は最後まで描写されて然り、の題材じゃないかと思うのですけどねー。
残念。
September 21, 2008 in films | Permalink | Comments (0) | TrackBack (0)