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08/31/2005

『彼岸過迄』、モラトリアム。

というわけで20数年ぶりに『彼岸過迄』を読んだのだけど、その内容はほとんど記憶に残っていなかった。そうそう、そんな名前やったなと、登場人物の名前しか覚えていなかった(苦笑)
読み終わってみれば後期3部作の最終章『こころ』を彷彿させる作品で、それだけにヘヴィといえば言えるが、ラストは穏やかに晴れた晩秋の午前という趣がある。ハッピーエンドだろう。

漱石はあまり構成を練らない作家だったのか、行き当たりばったりで書いたような印象を持つことが多いのだけど、この作品もそうだった。物語の前半は例えば『三四郎』以上に的が絞られず、モラトリアム感覚に満ちたエピソードをつらつら重ねるばかりで、一向に主題が見えてこない。何か象徴性を持たせようとしているのか、小道具の使われ方で気になる部分もあったが、後半になると全く用を足さない。でもまあ、通して読めば、純文学はいつの世でもモラトリアム世代を主人公とするものなんだなあとこちらも淡々と楽しむこともできる。案外モラトリアム世代を描くということこそ純文学の命題なのかもしれない。

後半、物語はいきなり核心に入っていく。主人公の友人須永の懊悩する吐露とその叔父松本の述懐が続く。後期3部作第1章の『行人』に登場する主人公の兄の言動が尾を曳くような根元的な重さがある。
重いとはいえ、やるせなさを感じるほどではないのはそれこそモラトリアム世代を描いているからか。

August 31, 2005 in books |

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