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05/06/2006

『ライフ・イズ・ミラクル』

『アンダーグラウンド』のエミール・クストリツァ。変わらない骨太のユーモアセンス。パワフルで、おおらかだ。息つく暇もくれない冒頭シーンでの笑いからラストカットまでクストリツァ節、ぎっしり。
楽しい。

旧ユーゴという一触即発の状況を何度も越えてきた土地柄故なのだろうか。じたばたしてても何も始まらない、楽しまなきゃ、という人生観? 違うか、もっとぎりぎりの、切羽詰まった感覚の裏返しだよな。豪放さは、悲劇の意味を知っているという裏付けがあってこそ。
死に親しんでいる日常じゃなきゃ、こうはいかないだろうね。
パルチザン・ベオグラード(鈴木隆行の所属するレッドスター・ベオグラードの永遠の敵)からオファーがあったその日のうちに徴兵招集の知らせがきた息子の壮行会があった翌日、父親ルカが苛まれた神経をどうすることもできずにボスニアでの市街戦を伝えるテレビを銃でぶっ放して荒れる様子なんか、特にそんなことを感じさせました。

これはどうあがいても日本映画にはできない作風ですね。岡本喜八が中上健次の小説を映画化したらあるいは同じような感覚を持てる作品になったかもしれない。
クストリツァはサラエボ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)出身のはずだけど、旧ユーゴで映画を撮るようになったのにはどういう事情があったのだろう。サラエボではとても映画なんて撮れなかったのだろうか。

Solak4

ザバーハを演じたナターシャ・ソラックが素晴らしい。タヴィアーニ兄弟の『グッド・モーニング・バビロン』でのグレタ・スカッキを思い出させるけど、あそこまでセンシブルでもない。もっと土臭く野太い魅力がある。これが映画出演2作目とはとても思えない。

May 6, 2006 in films |

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