『プロヴァンスの贈り物』の失敗。
なんかほんとに、地球がすっかり疲弊してしまっているんじゃないかと思う暑さが続いている。いろんなところでバランスが崩れて破綻をきたし、それを元に戻すようなたおやかさを持ち得なくなったというか。それほど若くはないのだろうね、地球も。いたわらないと。
涼を求めて先日ひさしぶりにドイツのリースリング(1,500円)を堪能したわけだけど、今回はフランスワインを味わうべく、『プロヴァンスの贈り物』を。リドリー・スコットとラッセル・クロウが『グラディエーター』以来にタッグを組んだ恋愛映画です。
なんでまたリドリー・スコットがこんな重みもない、映像が売りにもならない映画撮らなあかんねんとも思ったけど、原作のピーター・メイル(『南仏プロヴァンスの12ヶ月』)とスコットは70年代に一緒に広告を作っていた親友同士なのだとか。この原作自体、スコットがピーター・メイルに持ちかけたものらしいです。ってことはどうでもよくて、やっぱりプロヴァンスとアルバート・フィニーが出てるから観たかった映画だったのでした。
1900年前後にセザンヌが集中して描いたエクサン・プロヴァンスの一連の作品、その風景の中に立つアルバート・フィニーにという図に、なんかしらの幻想を抱いていたわけです、はい。ジョン・ヒューストンの『火山のもとで』を思わせるような。
それならそれで劇中でワイン愛好家垂涎の「ブティック・ワイン」としてちらほら出てくる「CP(ル・コワン・ペルデュ)」の経緯について突っ込むなどしてもう少し的を絞れば、主人公マックス(クロウ)とヘンリー叔父さん(フィニー)の絆が際立って、もっとドラマチックにもできただろうにと、残念。原作を読んでないからアレだけど、このへんは脚色の弱さを感じました。でも結局これは、ワインと叔父さんとマックスの映画じゃなくて、恋愛映画なんだよね。そういうこと。
バンドールの話も一度っきりだったし、全体的に散漫な印象。
アルバート・フィニーはあと何本主演級を演じていられるのだろうと思ってしまうだけに、もの足りない印象。脚本のせいとはいえ、それはないだろう、と。ワインでへべれけになるシーンとか入れて欲しかったな。
そのかわり、ブドウ園の管理者デュフロ(ディディエ・ブルドン快演)の父親を演った老俳優が素晴らしかった。誰なんだろう。
こんな、そこにいるだけでエスプリとちゃめっけを感じさせる役者って、なかなかいませんよね。
肝心のプロヴァンスは、風景というより、陽光がとてもいい感じ。木漏れ日が優しいですね。この映画のテーマに、この撮影はとてもいい相性だったと思います。
August 16, 2007 in films | Permalink
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