『のだめ』Lesson6、小津『晩春』
平日に時間が取れて、とりためていた『のだめカンタービレ』を朝から観る。ここ10数年テレビドラマなんて観ていないのだけど、これは傑出していますよね。素晴らしい。
ベートーベンの7番が終わってLesson5の回からラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。個人的には鬱陶しくて好きな曲ではないけどワイルダーの『七年目の浮気』やジョン・フォンティーンがめちゃくちゃ美しかった『旅愁』とかを思い出すちょっとミーハーな曲。耳につくんだよね(笑)
Lesson6後半から話は急展開し、主人公千秋が自分のオケをつくることになる。楽しみ。どんな曲を振るのだろう。
時間の合間を縫って小津の転機となったといえる『晩秋』を小刻みに観ている。主人公紀子(原節子)の叔母を演じた杉村春子が絶品。以下、紀子の父親(笠智衆)と叔母との掛け合い。
叔母「そりゃ昔から見りゃ今時の若い人は随分変わったもんよ。ゆうべのお嫁さんだってお里は相当なんだけど出てくるごちそうはあらまし食べちゃうし、お酒も呑むのよ」
父親「ふぅむ」
「真っ赤な口してお刺身ペロッと食べちゃうんですもの、驚いちゃったわ。」
「そりゃ食うさ、久しく無かったんだもの」
「だってあたしなんか胸いっぱいで、お色直しの時おむすびひとつ食べられなかったもんよ」
「いまなら食べるよお前だって」
「まさか。ーーでも、なってみなきゃ分からないけど」
「そりゃ食うよ」
「そうかしら」
「そりゃ食う」
「そうねえ。でもお刺身までは食べないわよ」
「いや食うよ」
「そうかしら」
「そりゃ食う」(中略)
「でもメソメソされるのも困るけど、ああシャアシャア(嫁に)行かれちまうのも親だって育て甲斐ないわね」
「そりゃまァご時世で仕様がないさ」
「紀ちゃんどうなの」
「うーん、あれだってメソメソなんかしやしないよ」
「いいえさ、お嫁の話よ。もう身体の方はすっかりいいんでしょ?」
「ああ、そりゃいいんだがね」
「ほんとならもうとっくに行ってなくちゃ」
「うん...」
「あの人なんかどうなの、ほら」
「だれ?」
「兄さんの助手の」
「ああ、服部かい?」
「どうなの、あの人なんか?」
「うーん、いい男だがね。紀子がどう思っているか。なんともなさそうだよ、たいへん当たり前にあっさり付き合っているようだがね」
「そりゃわかんないわよそんなこと、おなかン中で何を思っているか」
「そうかね」
「そうよ、そういうもんよ。今時の若い人達ですもの」
「そうよ」
「一度訊いてごらんなさいよ」
「誰に?」
「紀ちゃんによ」
「なんて?」
「服部さん、どう思うって」
「なるほどね。じゃ、訊いてみようか」
「そうよ。そりゃわからないもんよ」
「うん....」
「案外そんなもんよ」
「うん....(深く頷く)」
まあ、相手が笠智衆だからできる掛け合いではあるけど、絶妙の間。
呆気にとられてしまう。
November 22, 2006 in films | Permalink
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