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03/23/2008

「黒い家」ブロガー試写会。

Blackhouse
梅田の角川事務所でのブロガー試写会にて。
ソウルフル・ダークネス、とでもいうか。韓国映画なだけに。

貴志祐介の原作も、森田芳光の映画化作品も僕は未経験。監督シン・テラはこれで劇場デビュー。韓国映画は過去に2本しか観てないので、知っている俳優もいない。サイキック・ホラー、あるいはバイオレンス・スリラーということだけが前情報。原作は、保険金殺人の話。
始まって最初のほう、主人公が歩くさびれた田舎の暗く湿度のある空気は、人間の心の底にあるどろりとしたものを透かして伝え、素晴らしい。

が、サイキック・ホラー、あるいはバイオレンス・スリラーとしては弱かったように思う。
後半、タメをきかせた演出が作る、「シャイニング」で感じるような緊迫感はある。事件の本当の首謀者が分かってきたあたりからの仕掛けは予測もつかない。まさかそんな、の展開で畳み掛けてくる。いや、こんなんで驚いている場合じゃないんだよ、というような。
併せて、いろいろな過剰さがある。噴出するものを逆に抑え込もうとする演出の過剰さ、抑えた演技の中にちらちら見える過剰さ、スプラッター的な部分での過剰さ。
エンタテイメントでありながら、この過剰さがなにか、鼻につくような気がした。それは、物語を語る力の弱さだと感じる。

森田の作品が評価されたのは(観てなくてもたぶんそうなんだろうなと推測されるのだが)、結局物語を語る力によるものなのだろう。映像でみせるのだったら、いっそう脚本が練れていないと観客はついてこない。
スプラッターの力を借りた演出(R15指定なだけに)なので仕方ないのかもしれないけど、その辺が不満といえば不満。

公式サイト→「黒い家

 

March 23, 2008 in films | | Comments (0) | TrackBack (0)

03/20/2008

始まりに向けて。ナビスコ予選、浦和0-1神戸。

リーグ戦前節グランパス戦は周知の通り初戦横浜F・マリノス戦以上にずさんなゲーム、ちょっとこれは...の内容だった。連繋の悪さの解消が第一の課題だとはっきりしていたのに、いっそう悪くなり、何をしなければいけないかの部分において、フィールドの全員がてんでばらばらの方向を見ている。かなり痛かった。
唯一前半に細貝(?)から高原を全速で走らせたロングフィード、それに追い付いた高原がキープしつつ折り返したところにこれまた全速で飛び込んできた細貝、そしてシュート、この流れだけは素晴らしかった。
中盤高めでのキープが頼りないから、こういうパターンをもっと増やせば...とは思えた。

で、青天の霹靂的展開。オジェック解任、ゲルト・エンゲルスコーチが監督に就任。おおついにこの日が、である。
現場で見る機会の極端に少ない浦和ファンとしては、そこまで監督と選手たちとの関係が悪くなっているとは思えなかった。なんか暢久のイライラっぷりが度が過ぎるなあとは感じていたけど、修復もきかないところまでいっていたなんて。でもまあ、監督のヴィジョンが選手たちに伝わらないとこういうことになってしまうのは必然。戦術練習をほとんどしなかったというし、ほんとに無策の士だったんだね。

ゲルト・エンゲルスの監督就任は、フリューゲルスでの天皇杯優勝、サンガでの天皇杯優勝をリアルTV観戦してきた者にはもう本当に、待っていたぞ的感慨がある。とにかくチームをまとめるのが上手い。チームなんて生ものだから戦術もその時のチーム、あるいは敵チームに合わせたものがあるはずで、その意味ではまだ見えてこないものはあるけど、選手全員に同じ方向を向かせる手腕は確かだろう。
オジェック時代も岡野あたりが必死に檄を飛ばしていたようだけど、監督との断絶があったら何も生まれるはずがない。

TV観戦できていないのだけど、そのゲルト・浦和の初戦、ナビスコ予選(高原、啓太、阿部は代表へ)。
勝つにこしたことはないけど、まあ、何か光明が見えさえすれば、と願うゲーム、ヴィッセル神戸に0-1で破れた。誰もが言っているようだけど今季の神戸は強い。とにかく走るし、全員の意志統一が素晴らしい。そのチームを相手にして、後半、何か手応えはあったようだ。堤が先発し、なんと新人FW高崎が交代出場、セルヒオもほんと久しぶりにピッチに立った。
なんかひとつ、皮がむけたのだろう、すがすがしい感じはある。

 

March 20, 2008 in reds | | Comments (0) | TrackBack (0)

03/11/2008

第1節、横浜FM 1-0 浦和。

Jリーグ開幕。ほんとに待ちわびた。
関西では浦和のリアルタイムTV中継は観れないので、今日やっとJスポーツの録画放送で観戦。

エジミウソンと高原の2枚に、治療からまだ帰ってきていないポンテの代わりにトップ下は暢久。アレックスが負傷で代わりに相馬、DFは闘莉王、坪井、堀之内の3枚。

もういろんなところで書かれているように、浦和はひどい負け方をした。グアムキャンプでの実践練習が愛媛戦のみという不安があったにしても、相手は「お客さん」やしなあ、という楽観は無惨にも打ち砕かれた。ボールがまるで繋がらない。これがすべて。

相馬、高原がかろうじて走れていたしキープもできるが、とにかく効果的な連繋ができない。横浜の徹底して挟んでくるプレスと引きまくりの布陣に喘ぎっぱなしで、何も展開できていない。エリア付近に限らずパスが繋がらず、奪われてカウンター喰らうことしばし。
どういう戦術なんだこれ?って思っても、オジェックのことだ、はなから戦術はない。エジミウソンがからっきしキープできないのが痛いね。

失点シーン、坪井の甘いクリアは責められないだろう。むしろあの位置まで隼磨を進入させた中盤に非がある。小宮山の、中央からあの角度でのシュートも敵ながらあっぱれ。

引いた相手をどう崩すかという課題はいったいいつの頃からのものだったか。とはいえ、このゲームはそれ以前の問題。エクスキューズにもならない。

 

March 11, 2008 in reds | | Comments (2) | TrackBack (0)

03/06/2008

月にまつわる映画2編、モリッシーの「ムーン・リヴァー」

アカデミー賞授賞式が行われる前後週は、各TV局が特集で過去の受賞作品を放映してくれて楽しめる。というわけで最近録画した、「月」が印象的な映画を2本続けて観た。いずれも過去に観ているものだけど。ブレイク・エドワーズの「ティファニーで朝食を」とノーマン・ジュイソンの「月の輝く夜に」。
そういえば先月末の満月は凄かった。みんなそう感じていたようで、Flickrでも世界中から満月の写真がアップされていた。

「月の輝く夜に」はタイトル通り満月の輝く夜に、主人公たちがそろいも揃って発情し、大変身を遂げるロマンチックコメディ。といっていいんでしょうかね。ホラーじゃないんだけど(笑)
メトロポリタンでプッチーニの「ラ・ボエーム」を鑑賞した後、主人公シェールがニコラス・ケイジのアパートの前で誘われてためらうシーンは美しい。底冷えのするブルックリンの夜風になびいて揺れるシェールの黒髪。もうこれは映画史に残る名シーンじゃないかと。メイクアップ賞を獲っていないのが不思議なくらい。つっか、アカデミーメイクアップ賞ってありましたよね?
出演者皆が素晴らしい演技でいちいち堪能してしまうんだけど、どれこもれも脚本の為せる技。
あと、ブルックリンの下町がほんと魅力的に映し出されていて、それだけでも観る価値あるんじゃないかと。

「ティファニーで朝食を」では月の出てくるシーンはない。オードリー・ヘプバーンがアパートの窓の桟に腰掛けて、ギターを弾きながら「ムーン・リヴァー」を歌うだけだ。ヘンリー・マンシーニはこの曲で前年の「酒とバラの日々」に続きアカデミー主題歌賞を獲得。ちょっと我が強くてかなり背伸びしている感のある主人公にオードリーのはかなげな歌声はキャラクター造形のうえでとても重要な役割を果たしている。
それでも映画自体はほんとに他愛もないこれまたロマンチックコメディ。脚本にはさっぱりキレがないし相手役のジョージ・ペパードがひどい大根っぷりなので、マンシーニのこの曲がなければオードリー・ヘプバーンでも持ちこたえられなかったかもしれない。それだけ素晴らしい曲。

「ムーン・リヴァー」といえばフランク・シナトラやアンディ・ウイリアムスの歌唱が有名だけど、ちょっと珍しいところでモリッシーが歌ったものを紹介。モリッシーといえば The Smiths ですが、スミスについて書くことは、どれだけ言葉を尽くしても全然足りないと思えてしまって、難しい。だからいつも躊躇してしまう。いつかきっとと、ずーっと思い続けているのだけど。
どうしてモリッシーがこの曲を、シングル "Now My Heart Is Full" の中に収めたのかは知りません。ナンシー・シナトラのファンでもあるようで、そのつながりから、取り上げたのでしょうか。
オードリーの唄うはかなくセンチメンタルな歌とは違って、モリッシーのそれには神々しさが同居しています。間奏は、阿鼻叫喚地獄絵図かよこれ、というような。初めて聴いたときは鳥肌立ちました。

Moon River / Morrissey Morrissey

YouTube でもモリッシーのはあがっていますが、シングルに収められたものに比べれば曲の雰囲気は格段に落ちます。でも、ちょっと面白いです。
Youtube

あと、いろんな演奏の寄せ集め編集版。これはちょっと感動的でした。

March 6, 2008 in music | | Comments (0) | TrackBack (0)

03/02/2008

村上ソングズ / 村上春樹、和田誠

村上らしい、ジャズ、ロックのお気に入りの曲についてひとりごつようにぽつぽつ書かれた本。相変わらず和田誠とのコンビネーションが素晴らしく、味わい深いものがあります。
音楽に関する本では「ポートレイト・イン・ジャズ」「ポートレイト・イン・ジャズ2」「意味がなければスイングはない」「さよならバードランド」等いろいろ出していますけど、この「村上ソングズ」くらい洒脱なのも楽しめますね。その代わりあっと読み終えてしまうのが難と言えば難なのですけど。

僕が聴いてきた音楽はかなり偏りがあるので、本の中で紹介されている曲で知っているのは本当にごくわずか。その中からいくつか。

  • Autumn In New York / Ted Straeter
    ヴァーノン・デュークのお馴染みのスタンダードですけど、このTed Straeter盤は聴いたことありません。シナトラやビリー・ホリディで聴いてます。ここはビリー・ホリデイのものをよかったらどうぞ。
    Autumn In New York / Billie Holiday
  • Moonlight Drive / The Doors
    ドアーズの "Strange Days" 所収。僕がドアーズのことを知ったのは80年代に入ってからのことなので、彼等に強烈なシンパシーを感じているファンに対してはちょっと距離を感じます。ほとんどのアルバムを聴いてきているんですけどね。やっぱりあの時代だからこそのドアーズだから、なのでしょうか。それにしても、とくに初期のドアーズ、ジム・モリソンの声には本当にジビれますね。
    というわけで、YouTube から。
    この声はほんとに何なんだろうね。
    Moonlight Drive- The Doors- Live Hollywood Bowl 1968
  • Blue Monk / Abby Lincoln
    お馴染み、セロニアス・モンクの「ブルー・モンク」をアビー・リンカーンが詩をつけて歌ったもの。ボーカルが入ったものはカーメン・マクレエのものしか聴いたことが無くて、アビーのも是非聴いてみたい。ネットではこの二人のが見つからなくて、モンクのトリオのものをYouTubeから。ピアノの向こう側でカウント・ベイシー御大が悦に入っているのがもう、ゴキゲンです。
    Blue Monk / Thelonious Monk Trio
  • Miss Otis Regrets / Ella Fitzgerald
    コール・ポーターのちょっと不思議な味わいの曲。歌詞もデリケートで、奇妙な印象。エラ以外にもベッド・ミドラーとかカーメン・マクレエとか歌っていますが、おもしろい映像を見つけました。Kristy MacColl と、なんと The Pogues の共演!後半ではシェーン・マガヴァンも歌ってます。
    The Pogues & Kristy MacColl, VERY RARE Videos !

他にもR.E.Mとかシェリル・クロウ、ライ・クーダー、トニー・ベネット、ジョニ・ミッチェルとか。案の定、ブルース・スプリングスティーンも。ほんとに村上はスプリングスティーンが好きなんですね(笑)
こういった構成で、ぜひクラシック音楽版を出して欲しいなー。

村上ソングズ
中央公論新社
発売日:2007-12

March 2, 2008 in books | | Comments (0) | TrackBack (0)